カタログの写真は“商品の代弁者”──色と構成が語るブランドの世界観

「なんだかこのカタログ、印象が弱い気がする」
そう感じるとき、その原因の多くは“写真”にあります。

デザインやコピーに力を入れても、写真の印象が弱かったり、色味が冴えなかったりすると、どんなに良い商品でも“伝わらない”のが現実です。

カタログの写真は、商品を「見せる」ためだけのものではありません。
手に取った人に「伝える」ための大切な要素です。
そしてその中でも“色”は、言葉以上に感情へ訴えかける力を持っています。

写真の色が悪い・質感が伝わらない──それだけで購買意欲は下がる

「色がくすんで見える」「素材の質感がわからない」
そんな写真が並んでいると、お客様は無意識のうちに“その商品自体の魅力が乏しい”と感じてしまいます。

食品なら「おいしそう」が伝わらなければ手が伸びません。
アパレルなら「着てみたい」と思わせるトーンでなければ、印象に残りません。

つまり、写真の色や質感の再現度は、そのまま購買意欲と直結しているのです。
カタログでは、実物を見せることができません。
だからこそ、写真1枚で「見た人の頭の中にどんな情景を浮かばせるか」が勝負になります。

撮影・レタッチ・印刷——3段階での色管理が“印象”を守る

写真の色味は、撮影から印刷までの工程で少しずつ変化していきます

  • 撮影での照明の質
  • レタッチでの補正
  • 印刷での紙質

この3つのバランスが取れていないと、
「きれいだけど、なんか違う」という微妙な違和感が生まれます。

カタプラでは、この3段階を一貫して行うことで、
「意図した色」「ブランドらしいトーン」を最後まで守り抜くことを大切にしています。
色味は単なる再現ではなく、ブランドの世界観を形にするための表現手段

写真の印象をトータルで設計することが、完成度の高いカタログづくりにつながります。

どんな写真を載せるか——“見せたいもの”より“伝えたいこと”

「商品の全体をきれいに撮る」
それ自体は大切ですが、それだけでは印象に残りません。

カタログで大切なのは、「この商品を使うことでどんな価値や体験が得られるか」を想像させる写真です。

たとえば、

  • 食品なら「食卓に置かれた瞬間のおいしそうな空気」
  • 服なら「着た人の表情や季節の光」
  • 家具なら「暮らしの中に置いたときの空気感」

こうした“使用シーンを感じさせる要素”があるだけで、
写真は単なる商品の説明から、体験を伝えるストーリーへと変わります。

お客様は、写真を通して未来の自分を想像します。
そこに心が動くかどうかが、購買意欲の分かれ道です。

どのように写真を載せるか——レイアウトで印象は変わる

良い写真を撮っても、並べ方次第で印象は大きく変わります。
きっちりとしたグリッド構成にすると、商品数が多くても整理されて見え、
“信頼感”“誠実さ”を伝えられます。
一方で、雑誌のようにランダムな構成にすると、動きや臨場感が生まれ、
“ワクワク感”や“トレンド感”を演出できます。

たとえばアパレルなら、
1ページの中にモデルの全身カットとディテールの寄りを混在させることで、
素材のリアルさと世界観の両方を伝えることができます。

食品なら、
料理の引きと寄りを組み合わせたり、調理中のシーンを差し込んだりすることで、
「香り」「温度」「手触り」といった感覚まで想像させることができます。

つまり、レイアウトは“写真をどう見せるか”ではなく、“どう感じさせるか”の設計

写真の大きさにもこだわり、売れている商品、売り出したい商品は大きくするなどリズムを作り、最後まで飽きずに読んでもらえるカタログになります。

シズル感とは何か──「五感を刺激する写真」

カタログの現場でよく使う言葉に「シズル感」があります。
もともとは、肉が焼けるときの“ジュウッ”という音を表す英語 “sizzle” が語源です。

広告の世界では、「五感を刺激して『おいしそう』『気持ちよさそう』と感じさせる表現」のことを指します。
シズル感というと「食品写真だけ」と思われがちですが、実はどんな業種のカタログにも必要です。

アパレルのシズル感──“風”と“光”で質感を語る

アパレルの写真で求められるのは、「生地の質感」と「着たときの心地よさ」を感じさせる表現です。
たとえば、柔らかい布が風に揺れる瞬間や、自然光に透けるシフォン素材。
あるいは、モデルが動いたときに生まれる服の“しわ”や“空気感”。

こうした細かなディテールこそが、静止画に“動き”を生み出し、見る人に「この服を着てみたい」と想像させます。
単にファッションを見せるのではなく、“空気をまとう感覚”までを表現することがアパレルのシズル感です。

住宅・インテリアのシズル感──“暮らしの時間”を写す

住宅やインテリアでは、「空間」そのものよりも“そこで過ごす時間”を感じさせることが重要です。
朝の光が差し込むリビング、木の床に落ちるやわらかな影、
温かい食卓の余韻が残るキッチン——。

こうした一瞬の切り取りが、「この家で暮らしたら気持ちよさそう」と感じさせます。
家具や内装のスペックではなく、“心地よさ”という感覚を呼び起こす写真が、住宅・インテリアにおけるシズル感です。

化粧品・美容製品のシズル感──“触感”と“香り”を想像させる

化粧品やスキンケア製品では、「質感」こそが最大の訴求ポイントです。
しっとりとしたクリームのなめらかさ、みずみずしいジェルの透明感、
肌にのばした瞬間の“ツヤ”や“光の反射”——これらはまさに視覚的なシズルです。

また、ガラスボトルの透明感や金属パーツの輝きなども、
高級感や清潔感を伝える“感覚の言語”になります。

香りや触感といった、実際には写真では伝わらない要素を“感じさせる”のが、
化粧品・美容製品におけるシズル表現の真骨頂です。

電化製品のシズル感──“動作音”や“使用シーン”の余韻を伝える

一見、無機質に見える電化製品にも、確かなシズル感があります。
たとえば、スイッチを入れた瞬間の“静かな起動音”を想像させるような光の演出。
ドライヤーの風を受ける髪の動きや、コーヒーメーカーから立ちのぼる湯気。

それらはどれも、使う人の“体験”を写す表現です。
製品の機能を説明するだけでなく、「使っているときの心地よさ」や「暮らしの中での自然な存在感」を伝えることで、電化製品にも“感情の余韻”を与えることができます。


「その瞬間の空気や温度を感じさせる写真」こそがシズル。
見る人の想像を刺激することが、カタログの写真に必要な“生きた表現”なのです。

写真は情報ではなく、“感覚”に訴えるもの

テキストが「情報を伝える」ものであるなら、
写真は「感情を動かす」ものです。
どんなに詳しい説明を読んでも心が動かなくても、
1枚の写真を見ただけで「欲しい」「素敵」と感じることはあります。
だからこそ、写真には“情報の正確さ”以上に“感覚の伝わりやすさ”が求められます。

その感覚を支えるのが「色」です。
色は、写真の印象を方向づける要素であり、
ブランドの世界観を左右する最も強いビジュアルメッセージです。
温かみを出すなら少し赤みを強く、
高級感を出すなら落ち着いたトーンに。
そうした色の設計こそがブランド表現の核になります。

カタログの写真は、商品の“代弁者”

お客様はカタログを通して商品を見つめ、写真を通して“価値”を感じ取ります。
その写真が何を語っているかで、
「この商品が好きになれるかどうか」が決まるといっても過言ではありません。

写真は、商品の“代弁者”です。
「この商品を選ぶと、こんな気持ちになれる」
そのメッセージを無言で伝えるのが写真の役割です。

カタログの写真を見て、
「使ってみたい」「手に取りたい」と思ってもらえるようにする。
そのためには、
色・構成・シズル感を一体として設計することが欠かせません。

カタプラでは、撮影からレタッチ、印刷までを通して
商品の世界観をそのまま紙の上に再現するお手伝いをしています。
「写真を変えたら、カタログ全体の印象が変わった」
そんな声をいただくことも少なくありません。

“写真は商品の代弁者”。
伝わるカタログには、必ず心を動かす一枚があります。

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記事を書いた人

一木大輔
一木大輔
カタログ・パンフレットの業務全般に精通し、グラフィックデザイン、ウェブデザイン、DTP、スキャナーの経験があります。
データに関する相談にも対応可能です。
お客様が困っているときは、その場でオペレーションを行い、スムーズな解決をサポートします。
幅広いスキルを活かして、お客様のニーズに最適なご提案をいたします。