「うちの会社の商品を理解するためにカタログ制作担当になりなさい」と上司に言われてカタログ制作担当になった担当者様も少なからずいらっしゃいます。上司の方のおっしゃる通りでカタログ制作に携わると多くのことを学ぶことができると思います。
しかし、カタログ制作は、構成やデザインだけはなく紙によっても出来上がりが大きく変わります。紙には数多くの種類が存在し、どの紙を選ぶのが最適なのか迷ってしまうことが少なくありません。光沢のある紙、落ち着いた質感の紙、軽い紙、高級感のある紙、カタログの目的や印象に合わせて選択肢が多岐にわたります。
最近は、紙について細かい打ち合わせをせずにカタログ発行者様がご自身で印刷会社へ直接発注されるケースも増えています。その結果、紙の特性や印刷との相性を十分に理解しないまま、なんとなくの知識で紙を選んでしまうこともあり、思った仕上がりにならない、色味や質感が想定と違うといったトラブルにつながることもあります。 ここでは、カタログ制作の現場でよく見られる紙の勘違いについていくつか解説します。
目次
上質紙は上質な紙?という勘違い
上質紙と聞くと一般紙よりも上質な紙と想像してしまう人がいらっしゃいます。確かに化学パルプを100%使用し、名前通り原材料が上質なことから「上質紙」と呼ばれております。化学パルプは、保存性、耐久性に優れ、変色に強いことが特徴です。ですが写真の色が重要な商品カタログに適しているかというとそうではありません。
カタログ用紙の基本、塗工紙と非塗工紙
まず紙は、大きく塗工紙と非塗工紙に分かれています。
塗工紙(とこうし)とは紙の表面にインクの発色を良くするための薬品(コーティング)を塗布した紙になります。コート紙、マット紙が含まれます。
非塗工紙(ひとこうし)とは薬品を塗布していない紙で、上質紙、中質紙、更紙などがあります。インクが沈みやすく、鮮やかさは塗工紙に劣ります。
塗工することでインクの発色を良くするだけではなく、紙の表面強度も上がり、粘着力のあるインクから紙の表面を守る役割も果たします。 ですので、非塗工紙である上質紙は商品写真やイメージ写真を多く使うカタログには適していないと考えています。
上質はコート紙、マット紙よりも安い?
「そんなことは当然わかっている。あえてカタログ制作のコストを抑えるために上質紙を選んでいる」というカタログ発行会社様もいらっしゃいますが、コート紙・マット紙・上質紙の市場価格はほとんど変わりません。
ですので、弊社では上質紙はカタログには不向きな紙であると考えています。
「そんなことは当然わかっている。あえてカタログ制作のコストを抑えるために上質紙を選んでいる」というカタログ発行会社様もいらっしゃいますが、コート紙・マット紙・上質紙の市場価格はほとんど変わりません。
ですので、弊社では上質紙はカタログには不向きな紙であると考えています。
コート紙とマット紙の品質は変わらない、という勘違い
私が印刷業界に入り30年以上になりますが、昔は圧倒的にコート紙を選ぶカタログ発行会社様が多かったです。
最近は手触りや光沢を抑えたマットコート紙が選ばれることが多いです。
印刷会社の営業マンの中には、コート紙もマット紙は値段も質も変わらないのでお客様の好みです、という人もいますが厳密にはコート紙とマット紙ではいくつかの違いがあります。
写真の再現性の違い
コート紙はマット紙よりも細部の印刷表現が可能で、宝飾品、アクセサリー、工業部品など、金属の光沢や製品の細部をシャープに表現したい、料理のシズル感(みずみずしさや鮮やかさ)を表現できる紙になります。
マット紙は落ち着いた質感と高い可読性が求められる場合に適していますが、厳密にはコート紙よりも写真の細部の再現性が低い紙になります。
乾きの違い
それともう一つの違いとして、印刷時のインクの乾きです。
なんとなく(私も思っていましたが)コート紙よりもマット紙のほうがインクが染み込みインクの乾きが早いと思いがちですが、実際はコート紙のほうがインクの乾きが早く、裏写りなどの印刷ミスが少なく、製本など次工程に早く進めることができ時間短縮にもなります。
印刷事故は急ぎ案件などで起きる可能性が高いので、超急ぎ案件などではマット紙は不向きな場合があるのです。
特殊紙は金額が高い!という勘違い
高級カタログを作るために知っておきたい斤量メリット
色や手触り、風合いに特徴のある特殊な紙特殊紙を使うことで、カタログの質が上がりブランディング、他カタログの差別化が図れると思って印刷会社に見積もりを取るが異常に高いのであきらめてしまうことがあるのではないでしょうか?
そんなときに嵩高微塗工紙をお勧めします。
「嵩高(かさだか)」の名の通り、同じ厚さの一般的なマット紙に比べて密度が低いので、紙の取引単位である重量(kg)あたりの単価は少し高くても、カタログ1冊あたりの紙代(総額)は安くなる「 斤量メリット 」があります。
コート(マットコート)紙の110㎏と嵩高微塗工紙の90㎏では、紙の斤量単価ほど大きな金額の差が出ないのです。
少ない斤量で、厚さがありボリューム感のあるカタログを作ることができます。
その上、嵩高微塗工紙は軽いためページ数が多くても扱いやすく、めくりやすいメリットもあります。 塗工紙よりもコーティングが少ない微塗工紙でありながら印刷の仕上がりは非常に良く、写真集にも使用されるレベルの品質を持つのでコストと品質のバランスが良い用紙として使用されています。
弊社のお勧め嵩高微塗工紙
ヴァンヌーボは高級印刷嵩高微塗工紙の代名詞的な存在で、デザイナーからの知名度も高いですが、あまりにも価格が高いので似た紙で価格が低い「B7トラネクスト」をお勧めします。一度見積もりを取ってみてください。 弊社では嵩高微塗工紙を使った束見本も作成いたしますのでお気軽にお問い合わせください。
まとめ
正直デザイン会社や印刷会社は紙のプロではありません。しかも紙の在庫に関してはタイムリーな情報を提供することができません。
特定の紙に需要が集中した場合、市場から急に在庫がなくなり、希望の紙が使えなくなるリスクもあります。
弊社は創業70年を迎える老舗紙問屋の京橋紙業さんとのパートナーを組んでカタログ発行会社様と打ち合わせをして最適なご提案を行います。
京橋紙業株式会社 営業担当:継岩様
記事を書いた人

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Web・紙媒体問わず、売上アップを得意とするプロデザイン集団率いる2代目社長。
幼少の頃からじっとしていることが苦手で、通信簿には常に「落ち着きがない」と書かれるが
経営者になってからは、それを「行動力」という強みに変えて開花。
2015年には「東美のデザインは世界に通ず」を合言葉に海外進出を実現。またその経験を
もとに企業の海外進出をサポートする業務を開始するなどの手腕を発揮。
酒は飲まねど場の雰囲気を一気に飲み込む声の大きさと、社員を信じきる懐の深さはメジャー級。そのまっすぐな性格同様、とにかく曲がらないショットでゴルフの腕前はプロ級。
最近は、新たなに会社につくった「カタログ図書館」を見ては、お客様の笑顔を妄想しニヤニヤしている。

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