最近、デジタルカタログへの注目は高まる一方で、弊社にカタログ制作を依頼されるお客様からも、同時にデジタルカタログの制作をご要望いただくケースが大変多くなっています。
デジタルカタログは単なるファイルではなく、プログラムとデータが一体となった一種のシステムです。そのため、作成には専用ツールや専用サービスを利用する必要があります。
こうしたニーズの高まりに比例して、デジタルカタログ制作サービスも増えており、比較サイトなどもよく見かけるようになりました。
デジタルカタログの作成を検討されている方は「どのツールやサービスを選ぶべきか」と迷われることが多いと思いますが、実はデジタルカタログの品質を左右するのはツールやサービスだけではありません。
多くのデジタルカタログ作成サービスは、PDFファイルを変換して作成します。つまり、元となるPDFファイルの品質こそがデジタルカタログの品質にもっとも大きく影響します。
どれほど機能が豊富で使いやすそうなサービスであっても、元のPDFの品質が低ければ、高品質なデジタルカタログを作ることはできません。
では、デジタルカタログの元となるPDFは、どのように作成するのがよいのでしょうか。
目次
PDFは誰がどうやって作る?
デジタルカタログ用のPDFは、多くの場合、紙のカタログのデータから作成されます。
その方法は大きく2つです。
- 印刷されたカタログをスキャンする
- 制作ソフトウェアから直接PDFを書き出す

スキャンして作るPDFはNG
印刷物をスキャンして作成したPDFからでもデジタルカタログを作ることは可能ですが、以下の理由からお勧めできません。
- 画質が悪い
色味は光で変化するため、プロ用の機器を使い専門オペレーターが作業しなければ、正確な色調でスキャンするのは困難です。
また、印刷物を拡大すると画像が粗くなり、高精細スキャンでは網点や紙の質感を拾ってモアレが発生します。 - 文字がテキストデータとして使えない
デジタルカタログの大きなメリットに「文字検索機能」がありますが、スキャンでは文字も画像として取り込まれるため検索できません。
OCR機能を利用して文字を抽出できるサービスもありますが、日本語のようにカタカナ・漢字・アルファベットが混在する言語では、AIを使っても十分な精度は得られません。小さい文字や太字はつぶれて判読できないこともあります。

制作ソフトからPDFを書き出す場合の注意点
カタログ制作には一般的に Adobe InDesign や Illustrator などのプロ用ソフトが使われます。これらには高品質なPDFを書き出す機能が備わっており、印刷データからデジタルカタログ用PDFを作成するのが最適です。
ただし、印刷を最終目的とする場合には、デジタルカタログに不向きな制作方法が取られることがあります。
- テキストのアウトライン化
フォント不足による文字化け防止や処理軽減のため、文字を画像化することがありますが、検索できなくなります。 - 高解像度画像の使用
印刷向けには高解像度・低圧縮の画像を使うため、ファイルサイズが非常に大きくなります。一般的に印刷用画像はウェブ用の10〜100倍の容量になります。 - 製本を意識したページ構成
実際の閲覧順序と異なる構成でデータが作られる場合があります。(例:表紙と裏表紙が隣接、モノクロページとカラーページが別データなど)


PDFの種類と特徴
PDFには用途に応じた書き出し方法があり、適さないものもあります。代表的なものは次の通りです。
商業印刷用PDF
入稿用の最高品質PDF(PDF/X-1a、PDF/X-4、プレス品質など)。画像が非圧縮で埋め込まれるためデータが重く、裁ち落としやトンボが含まれます。ハイパーリンクなどは削除されています。

家庭・オフィス用プリンター印刷用PDF
家庭用やオフィス用プリンター向け(高品質印刷)。画像が縮小され、フォントは最低限のみ埋め込まれます。

ウェブ用PDF
ウェブ閲覧向け(最小ファイルサイズ)。画像はディスプレイ向けに縮小され、カラーはsRGBに変換されるため印刷物とは色が変わる場合があります。フォントは最低限のみ埋め込まれ、一部が未埋め込みとなることもあります。

実は、上記のいずれもデジタルカタログに最適ではありません。
デジタルカタログに適したPDFの条件
デジタルカタログに最適なPDFは、次の条件を満たすものです。
- ウェブ用PDFの設定をベースにする
- 画像をできるだけ高品質に保つ
- 使用テキストに必要十分なフォントを埋め込む(サブセット化)
- 可能であればハイパーリンクを設定する(目次リンクや外部リンクなど)
ただし、具体的な設定はサービスごとに異なるため、事前確認が必要です。専門知識も求められるため、制作会社との連携が非常に重要です。
PDF制作の3つのポイント
- 印刷物制作前にデジタルカタログ化を伝える
最も重要なのは、デジタルカタログに不向きな手法を避けることです。テキストをアウトライン化せずに制作したり、アウトライン化前のデータを保持するなどの対応が可能です。依頼時に「デジタルカタログ化も行う」ことを必ず伝えましょう。反応が不十分な制作会社は知識不足の可能性が高いため注意が必要です。 - 最適なPDF条件を確認する
各サービスには推奨設定がありますが、理解には専門知識が必要です。必要に応じて、制作会社とサービス業者間で直接確認してもらうことをお勧めします。 - PDF書き出しは制作会社に依頼する
フォント埋め込みにはライセンス契約が必要で、契約環境でなければ埋め込めません。さらに、プロ用ソフト(Adobe Creative Cloudなど)を利用することで最適な圧縮・フォント処理が可能です。プロ用ツールを使えばページ構成の調整やリンクの埋め込みも可能です(通常は有料)。

デジタルカタログは印刷物とセットで依頼するのが最適
多くのサービスは「どんなPDFからでも作成可能」と謳っていますが、元のPDF品質が悪ければ仕上がりも低品質になります。
また、誰でも簡単にカタログを作れるクリエイティブツールもありますが、画像やPDF設定が固定されており、最適な調整はできません。調整できたとしても、判断には専門知識が必要です。
結局のところ、印刷カタログもデジタルカタログも、専門業者に依頼するのが最適です。両方を同時に依頼すれば、結果的にコスト削減にもつながります。
東美では、印刷物の制作とデジタルカタログの作成をセットでご依頼いただけます。さらに、ウェブサイト制作も併せてご依頼いただければ、インターネット公開まで対応可能です。
ぜひ、デジタルカタログの作成は東美にご相談ください。
記事を書いた人
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シニアディレクター
1990年代からWEB制作を始め、現在でも最新の技術に触れるため勉強会に積極的に足を運んでいる
WEB案件の見積・デザイン・コーディング・保守まですべての工程を手掛けることができ、公開後の運用を見越したディレクションには定評がある
DTPの経験も長く、InDesignとWEBの連携も得意
WordPress公式カンファレンス・Meetup などでの登壇経験多数
黒柴犬とシロハラインコのパパ
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